実家じまいとは?進め方・費用・税金と後悔しない手順を解説

この記事では、私が法務省や国税庁の公式情報にあたって確認した事実をもとに、進め方・費用・税金、そして親が拒否したときの説得や認知症の場合の手続きまで整理しました。
正直に言うと、実家じまいでいちばん難しいのはお金より「親の気持ち」と「兄弟の話し合い」です。そこも遠慮なく書きます。
実家じまいとは?意味と増えている理由

まず言葉の意味から。実家じまいとは、親が住んでいた(または住んでいる)実家を整理し、片付け・売却・解体などによって手放すまでの一連の取り組みを指します。

背景には空き家の増加があります。総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、2023年10月1日現在の空き家数は900万戸、空き家率は13.8%で、いずれも過去最高でした。
実家じまいの定義
実家じまいは「家を売ること」だけではありません。親の転居先の確保、家財の処分、仏壇や墓の供養、名義変更まで含む、生活と相続が絡み合った作業です。
だから不動産の話と介護の話、相続の話を別々に考えると、必ずどこかでつまずきます。
実家じまいが増えている背景
理由はシンプルで、誰も住まなくなる家が増えているからです。前述の空き家率13.8%という数字が、その現実をそのまま表しています。
子世代が都市部に出て戻らない。親が施設に入る。その間に家だけが残る。私が相談内容を整理していても、このパターンが圧倒的に多いです。
実家じまいを始めるタイミング
私の意見をはっきり言います。親が元気なうちに始めるのがいちばん良いです。
理由は、判断能力があるうちでないと本人の意思で売却や処分ができないこと、そして相続後には税金の期限が一気に迫るからです。相続税の申告・納付期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内と決まっています。
実家じまいの進め方・全体の流れ
何から手をつけるか分からない人のために、流れを4ステップに整理しました。順番を飛ばすと、後で「片付けたのに売れない」「売る前に名義でつまずく」といった事態になります。

| 順番 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 1 | 家族・親族で方向性を話し合う | 売却か残すか、誰が主導するかを決める |
| 2 | 親の転居先を決める | 施設・賃貸・同居など本人の希望を優先 |
| 3 | 片付け・不用品を処分する | 思い出の品と廃棄品を分ける |
| 4 | 売却方法を決め業者へ相談 | 複数社を比較して決める |
家族・親族で方向性を話し合う
最初の話し合いが、後のトラブルを9割防ぎます。売るのか、貸すのか、誰が費用を出すのか。ここを曖昧にしたまま進めると、片付けの途中で兄弟げんかになります。
私が勧めるのは、親も同席させて「実家をどうしたいか」を本人の口から言ってもらうこと。子だけで決めると、必ず後で反発が出ます。
親の転居先を決める
家を手放すなら、親の次の住まいが先です。施設、子との同居、サービス付き高齢者向け住宅など、選択肢は本人の介護状態と希望で変わります。
転居先が決まらないうちに家を売ると、親が行き場を失います。順番は絶対に守ってください。
実家の片付け・不用品を処分する
片付けは、想像の3倍の体力と時間を奪います。私が見てきた中でも、ここで心が折れる人が多いです。
コツは「全部一気にやろうとしない」。残す物・捨てる物・売る物・親に確認する物の4つに仕分けるだけで、判断がぐっと楽になります。
売却方法を決めて業者へ相談する
売却は、不動産会社1社の言い値で決めないこと。これだけは譲れません。
古い家なら、解体して更地で売るか、古家付きのまま売るかで手取りが変わります。複数社に査定を出させて比較するのが鉄則です。
実家じまいにかかる費用と税金の注意点
費用は「処分・解体・転居」の出ていくお金と、「売却時の税金」の二つに分けて考えると整理しやすいです。ここでは公式情報で確認できる税金の特例と、補助金の仕組みを中心に解説します。

不用品回収・解体・転居にかかる費用の目安
不用品回収、家屋の解体、親の転居費用。これらは家の大きさや地域、業者で大きく変わるため、全国一律の相場は示せません。
正直に言うと、ネットで見かける「解体○○万円」は条件次第でいくらでもブレます。必ず現地で複数社に見積もりを取ってください。
売却時にかかる税金と3,000万円控除の特例
ここは知らないと数十万円単位で損する話です。被相続人の居住用家屋などを相続・遺贈で取得して売却した場合、一定要件を満たせば譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。
ただし期限と要件が厳しい。相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があり、対象家屋は1981年5月31日以前の建築などの条件があります。この特例の対象は2027年12月31日までの譲渡です。
つまり「いつか売ろう」と先延ばしすると、控除を使えず税金が跳ね上がります。私が早めの着手を勧める最大の理由がこれです。
相続税が高額になるケース
実家のほかに預貯金や他の不動産があると、相続税が想定外に膨らむことがあります。申告・納付の期限は前述のとおり10か月以内。
この10か月は本当にあっという間です。葬儀や四十九日を終えた頃には、もう半分が過ぎています。
補助金・助成金の活用方法
解体や活用には自治体の補助が使える場合があります。国土交通省は、自治体による空き家の除却・改修・活用を支援する空き家対策総合支援事業を実施しています。
注意点は、実施主体が自治体だということ。補助の有無・上限額・要件は市区町村ごとに異なり、全国一律の金額では示せません。まず実家のある市区町村の窓口に問い合わせるのが確実です。
親が片付けや売却を拒否したときの合意形成

ここが、競合記事があまり書かない本丸です。実家じまいで最後まで残る壁は、家でも金でもなく「親の感情」と「兄弟の利害」。私の経験上、ここを軽く見た人ほど揉めます。

親の気持ちに寄り添う説得の進め方
親にとって実家は、財産ではなく人生そのものです。だから「邪魔だから処分しよう」という言い方は地雷になります。
私が勧めるのは、結論を急がず「将来この家をどうしたいか」を一緒に考える姿勢を見せること。空き家のまま放置するリスク(後述)を、責めずに事実として伝えるのも効きます。
兄弟姉妹間で費用・遺産分割を決めるコツ
お金の話は、口約束にしないこと。誰がいくら出し、売却益をどう分けるか。必ず文書に残してください。
特に「片付けを手伝った人」と「お金だけ出した人」で不公平感が生まれやすい。最初に役割と取り分を決めておくと、後の恨みが減ります。
親が認知症・要介護の場合の手続きと成年後見制度
親の判断能力が落ちていると、本人名義の不動産は本人の意思だけでは売れません。この場合に使うのが成年後見制度です。
後見人が選ばれるまで時間がかかること、居住用不動産の売却には家庭裁判所の許可が必要なことを覚えておいてください。元気なうちに動く重要性は、ここでも変わりません。
仏壇・墓じまいと思い出の品の残し方
家を片付けると、必ず出てくるのが仏壇・神棚・お墓、そして大量の写真や手紙。ここを雑に扱うと、後から強い後悔が残ります。

仏壇・神棚・墓じまいなど祭祀財産の処分と供養
仏壇や神棚、墓は「祭祀財産」と呼ばれ、通常の遺産とは別に承継者を決めます。処分する場合は、菩提寺や神社に相談し、閉眼供養(魂抜き)などの供養を経てから行うのが一般的な手順です。
墓じまいには、改葬許可など行政の手続きも絡みます。先に親族間で「誰が手を合わせ続けるのか」を話しておくと、後でこじれません。
写真や手紙のデジタル化と残し方の工夫
アルバムや手紙を全部残すのは無理です。でも全部捨てると、必ず後悔します。
私の落としどころは、スキャンや写真撮影でデータ化して残すこと。実物は厳選した数点だけ取っておく。クラウドに上げておけば、遠方の兄弟とも共有できます。
売却以外の選択肢と空き家放置のリスク
「売る」以外にも道はあります。ただし、いちばんやってはいけないのが「決めずに放置」。ここは事実をもって脅すくらいでちょうどいいと思っています。

賃貸活用やリフォームとの比較検討
立地が良ければ、貸して家賃収入を得る選択もあります。リフォームして賃貸に出すか、そのまま売るか。判断軸は「需要があるか」と「修繕費を回収できるか」です。
| 選択肢 | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|
| 売却(更地) | 古い家・需要のある土地 | 解体費がかかる |
| 売却(古家付) | 解体費を抑えたい | 価格が下がりやすい |
| 賃貸活用 | 立地が良い・需要がある | 修繕費と空室リスク |
| 放置 | おすすめしない | 税負担増・特定空き家リスク |
空き家のまま放置する危険性
放置の最大のリスクは、管理不全で「特定空き家」に指定されること。指定されると固定資産税の優遇が外れ、税負担が増えます。倒壊や雑草で近隣トラブルにもなります。
「とりあえず置いておく」は、毎年お金が出ていく選択だと理解してください。
相続登記の義務化など最新の法制度
見落とされがちですが、これは義務です。相続登記は2024年4月1日から義務化され、相続で不動産を取得した人は、原則として取得を知った日から3年以内に申請しなければなりません。
2024年4月1日より前に発生した相続で未登記のものも対象で、2027年3月31日までに申請が必要です。違反には10万円以下の過料が定められています。
失敗談から学ぶ実家じまいのチェックリスト

よくある失敗は、だいたいパターンが決まっています。遠方ゆえに後回しにする、業者を1社で決める、期限を見落とす。ここを潰せば大きな後悔は避けられます。

遠方に住む人のためのリモートでの進め方
遠方だと、現地に何度も通えないのが一番の壁です。私なら、現地調整をしてくれる不動産会社や、リモート相談に対応する専門家を窓口にします。
片付けは不用品回収業者に立ち会いを任せ、貴重品と書類だけ自分で確認する。すべてを自分でやろうとしないのがコツです。
業者選びの比較ポイントと注意点
不動産会社も解体業者も不用品回収業者も、共通する選び方は「相見積もりを取る」「内訳を明示させる」「実績と許可を確認する」の3点です。
特に解体と回収は、追加費用でもめやすい。見積書に「一式」が多い業者は、私なら避けます。
早めに始めるべき理由とスケジュール感
なぜ急ぐのか。期限が複数あるからです。相続放棄は知った時から3か月、相続税申告は10か月、相続登記は3年。さらに3,000万円控除も相続から約3年が勝負です。
これらの期限が同時に走り出すのが相続発生後。だから私は「親が元気なうちに話し始める」を何度でも勧めます。
実家じまいに関するよくある質問
最後に、相談で特に多い3つの質問に短く答えます。

よくある質問
今日できる一歩は、実家のある市区町村の名前で「空き家 補助金」を調べ、相続登記が済んでいるかを確認すること。たったこれだけでも、後の負担は大きく変わります。
