新設「デジタル遺言」いつから使える?公正証書との違い
- デジタル遺言(保管証書遺言)の正式な施行日は、現時点で公式に確定していない。
- 公正証書遺言のデジタル化とウェブ会議での作成は、すでに動き出している論点として報じられている。
- 従来の自筆証書遺言・公正証書遺言と、新しいデジタル遺言では費用も手続きも大きく異なる。
- 制度が始まる前でも、自筆証書遺言や法務局の保管制度を使えば準備は進められる。
- 確実な施行時期や要件は、法務省など公式発表の確認が欠かせない。
私は相続・終活の制度を公式情報にあたって整理してきました。この記事では、いつから・どんな手順で・いくらで作れるのかを、当事者目線で分けて説明します。数値は確認できたものだけを書きます。
デジタル遺言はいつから始まる?施行時期の結論

結論から言うと、デジタル遺言(保管証書遺言)の施行日は本記事の執筆時点で公式に確定していません。
「もうすぐ使える」という空気だけが先行しがちですが、正確な施行時期は改正法の公布や政省令の整備を待つ必要があります。ここは推測で日付を書くべきところではありません。
デジタル遺言(保管証書遺言)とは何かをやさしく解説
デジタル遺言とは、手書きでなくパソコンやスマホで作った遺言を、電子データのまま公的機関に保管して効力を持たせる仕組みのことです。
従来の自筆証書遺言は「全文手書き」が原則でした。手が不自由な高齢者にはこれがかなりの負担です。デジタル化されれば、キーボード入力で作れる。ここが一番大きな変化だと私は考えています。
「保管証書遺言」という呼び方は、作ったデータを法務局などに保管してもらうことで公的に扱われる、という発想からきています。
法改正のスケジュールと施行時期の根拠
施行時期を語る根拠は「改正法がいつ公布され、政省令がいつ整うか」に尽きます。この2つが決まって初めて、正式な運用開始日が示されます。
直近では、朝日新聞が「新設デジタル遺言 使い勝手どうなる」と報じ、弁護士への取材で使い方を掘り下げています。制度が現実の議題として動いている、という事実はここから読み取れます。
一方で、その記事見出しから「◯年◯月施行」と確定して読み取れるわけではありません。だから私は日付を断定しません。確実なのは、公式発表を待つべき段階だという点です。
制度が創設される理由・背景
デジタル遺言が創設される背景は、高齢化で遺言のニーズが増える一方、手書き原則が作成のハードルになっているためです。
実際、遺言作成を支援するアプリも登場しています。時事ドットコムはAI遺言書作成支援アプリ「AIユイゴンWell-B」が新機能をリリースしたと報じました。デジタルで遺言を残したいという需要が、民間からも見える形で出ている証拠です。
紙・印鑑・押印を前提にした手続きを、社会全体がデジタルへ寄せている流れの一部、と捉えると分かりやすいです。
デジタル遺言の3つのメリット
デジタル遺言の最大の利点は、手書きの負担から解放され、オンラインで手続きが完結し、保管によって効力が担保されることの3点です。
順番に見ていきます。どれも従来の遺言のつまずきポイントを解消する方向にあります。
パソコンやスマホで遺言書が作れる
最大のメリットは、全文手書きが不要になることです。
自筆証書遺言は1文字でも他人が代筆したり、日付が抜けたりすると無効になりかねません。長文を手書きするうちに書き間違え、何度も書き直した——そんな失敗談を私は相談の場で何度も聞いてきました。入力で作れるなら、この手間はかなり減ります。
法務局に行かずオンラインで手続きできる
2つ目は、窓口に足を運ばずオンラインで手続きが進められる方向で設計が検討されている点です。
公正証書遺言でも、ウェブ会議を使った作成が現実の選択肢になりつつあります。朝日新聞は「公正証書遺言、デジタル化でどう変わった? ウェブ会議での作成例は」と報じ、実際の作成例に触れています。移動が難しい人には大きい変化です。
法務局にデータが保管され効力を持つ仕組み
3つ目は、作ったデータを公的機関が保管することで、紛失や改ざんのリスクを抑えられる点です。
自宅で保管した遺言は、見つからない・捨てられる・書き換えられる、という不安がつきまといます。データを公的に保管すれば、そこは大きく改善する。正直、私はこの「保管」こそが制度の肝だと思っています。
デジタル遺言の手続きと作成の流れ
デジタル遺言の手続きは、作成→本人確認→保管という流れが基本の骨格になります。
ただし細かな手順は制度の最終形と政省令で決まります。以下は現時点で見えている考え方として読んでください。
作成から保管までのステップ
想定される流れは、次のような段階です。
- 遺言の内容をパソコンやスマホで入力して作成する。
- 本人であることを確認する手続きを行う。
- 作成した遺言データを公的機関に保管申請する。
- 保管が完了し、遺言としての効力を持つ状態になる。
紙の遺言に比べ、物理的な原本の保管に悩まなくてよくなるのが実務上の変化です。
本人確認の方法(電子署名・マイナンバーカードの活用)
デジタル遺言で最も重要なのが本人確認です。「本当に本人が作ったのか」を担保できないと、遺言は簡単に争いのタネになります。
一般に電子的な手続きでは、電子署名やマイナンバーカードによる本人確認が使われます。デジタル遺言でも同様の仕組みが軸になると考えるのが自然です。
ただ、具体的にどの方式が採用されるかは、公式に確定した情報として私は確認できていません。ここは断定を避けます。採用方式は必ず公式発表で確かめてください。
ウェブ会議を使った遺言作成の進め方
ウェブ会議を使った遺言作成とは、公証人や関係者と対面せず、オンラインの画面越しに手続きを進める方式のことです。
前述の朝日新聞の記事は、公正証書遺言でウェブ会議を使った作成例を取り上げています。遠方に住む人、体調で外出が難しい人にとって、この選択肢は救いになります。
実際に使う場合は、通信環境と、画面越しでも本人確認が成立する準備が要ります。ここは軽く見ないほうがいい部分です。
保管後の閲覧・通知・撤回の扱い
保管した遺言は、生前は本人が内容を確認・撤回でき、死亡後に相続人が閲覧できる、という設計が想定されます。
自筆証書遺言の法務局保管制度でも、死亡後に相続人へ通知する仕組みがあります。デジタル遺言でも「遺族が遺言の存在に気づけない」という最悪の事態を防ぐ設計が期待されます。
撤回や書き換えの手続きがどこまで簡単になるかは、運用ルール次第です。
遺言書の種類を比較|費用と特徴の違い

遺言書は主に自筆証書遺言・公正証書遺言・デジタル遺言(保管証書遺言)の3種類で比べると、手間・安全性・費用のバランスが見えてきます。
どれを選ぶかは「安さ」より「無効になりにくさ」で考えるのが、私の基本スタンスです。
自筆証書遺言・公正証書遺言・デジタル遺言の比較表
| 項目 | 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | デジタル遺言(保管証書遺言) |
|---|---|---|---|
| 作成方法 | 原則すべて手書き | 公証人が作成 | パソコンやスマホで入力 |
| 保管 | 自宅または法務局 | 公証役場 | 公的機関に保管(想定) |
| 改ざんリスク | 高い(自宅保管の場合) | 低い | 低い(保管で担保・想定) |
| 費用 | 低い | 財産額に応じて必要 | 未確定(要公式確認) |
| 現時点の利用 | 可能 | 可能(ウェブ会議の例あり) | 施行日未確定 |
それぞれの費用を比べる
費用は自筆証書遺言が最も安く、公正証書遺言は財産額に応じて手数料がかかる、という順序です。
公正証書遺言の手数料は財産の額で変わるため一律には言えません。デジタル遺言の費用は、本記事執筆時点で公式に確定した金額を私は確認できていません。ここで具体的な金額を出すのは、創作になるのでやめておきます。
公正証書遺言のデジタル化との違い
公正証書遺言のデジタル化と、新設のデジタル遺言は別物です。
公正証書遺言のデジタル化は、既存の公証人が関わる制度を電子化・オンライン化する話です。一方でデジタル遺言(保管証書遺言)は、公証人を介さず本人が作って保管する新しい枠組みとして議論されています。
混同すると「公証人に頼めばいいのか、自分で作るのか」で迷います。ここは分けて理解してください。
デジタル遺言の注意点とリスク
デジタル遺言で一番怖いのは、要件を満たさず無効になることと、データの改ざん・消失のリスクです。
新しい制度ほど、最初の運用でつまずきやすい。慎重に見ていきます。
無効になるケースと法的要件
遺言は形式要件を1つでも欠くと無効になり得ます。これはデジタルでも変わりません。
自筆証書遺言なら日付や署名の不備、公正証書遺言なら証人の要件などがつまずきポイントでした。デジタル遺言では、本人確認や保管手続きの要件を満たしているかが焦点になります。
「作ったつもり」で保管手続きが完了していなければ、効力を持たない可能性がある。ここは特に気をつけたい点です。
改ざん防止・データ保全のセキュリティ対策
デジタル遺言の信頼性は、改ざん防止とデータ保全の仕組みにかかっています。
公的機関が保管し、電子署名で本人性を担保する設計であれば、自宅保管の紙より安全性は上がります。とはいえシステム障害やデータ消失のゼロリスクはあり得ません。
正直に言うと、私はこの点を過度に不安がる必要はないと考えています。紙が火事や紛失で消えるリスクと比べれば、公的保管のほうが安心できる場面は多いはずです。
デジタル遺言で対応できない事項
デジタル遺言でも、すべての希望を書けるわけではありません。
感謝の言葉のような付言事項、複雑な信託や事業承継がからむ財産分けは、専門家の設計が要る領域です。デジタルで手軽に作れるからといって、複雑なケースを自己流で片付けるのは危険です。
非上場株の相続税評価見直しなど、事業承継の環境も動いています。オーナー経営者ほど、遺言だけで完結させない発想が要ります。
高齢者やネット環境がない人・海外在住者への対応
デジタルに不慣れな人やネット環境がない人にとって、デジタル遺言はかえって使いにくい面があります。
だからこそ、従来の自筆証書遺言や公正証書遺言は残ります。デジタル一択にはなりません。親世代に無理にデジタルを勧めるより、公正証書遺言のほうが確実な場面は多い、と私は思います。
海外在住者や海外資産がある場合は、準拠法や現地の手続きがからみ、複雑になります。ここは専門家に相談する前提で考えてください。
相続人・遺族側の手続きと専門家に相談すべきケース
遺族側の負担は、遺言の存在に気づけるか、検認が要るか、で大きく変わります。
作る側だけでなく、残された家族の手続きまで見通しておくのが賢い準備です。
