贈与税の計算方法を税率・速算表と計算例でわかりやすく解説

この記事では、国税庁の速算表をそのまま使った計算例、非課税にできる5つのケース、2024年改正の落とし穴、申告と納付の手順まで一気に確認できます。
私は相続・終活の手続きを公式情報にあたって整理している編集部です。数字は国税庁の案内で裏づけが取れるものだけを使います。まずは自分の税額の目安をつかんでください。
贈与税の計算とは?基本の仕組みをわかりやすく解説

贈与税は、財産をもらった人(受贈者)にかかる税金です。あげた側ではなく、もらった側が払う。ここを取り違える人が意外と多い。

贈与税とは何か(もらった財産にかかる税金)
贈与税は、原則として1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与を合計して計算します。現金だけでなく、不動産や株式の名義変更なども対象です。
つまり「年単位の合計」で見る、という点がまず大前提になります。
暦年課税と相続時精算課税の2つの方式
贈与税の計算方法は2つあります。何もしなければ自動的に使われる「暦年課税」と、贈与者ごとに届出をして選ぶ「相続時精算課税」です。
相続時精算課税は累計2,500万円までの特別控除がありますが、いったん選ぶと同じ贈与者からの贈与で暦年課税には戻せません。選択は届出が必要です。
年間110万円の基礎控除の考え方
暦年課税の基礎控除は110万円。1年間の贈与の合計から110万円を引いた残りが課税の対象になります。
逆に言えば、1年間の贈与が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。ここが出発点です。
贈与税の計算方法と税率(暦年課税)
暦年課税の税額は、国税庁が示す式で機械的に出ます。「(その年の贈与合計-110万円)×税率-控除額」。この一行で完結します。

計算の基本ステップ(基礎控除を引いて税率をかける)
手順はシンプルです。1年間にもらった額を合計し、110万円を引く。その残額(課税価格)を速算表に当てはめ、税率をかけて控除額を引く。これだけ。
注意したいのは、税率を決めるのは贈与額そのものではなく「110万円を引いた後の課税価格」だという点です。
一般贈与財産用(一般税率)の速算表
一般税率は、特例税率に当てはまらない贈与に使います。たとえば夫婦間、兄弟間、親から未成年の子への贈与などです。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
特例贈与財産用(特例税率)の速算表
特例税率は、直系尊属(父母や祖父母)から、その年の1月1日時点で18歳以上の子や孫への贈与に使います。年齢基準は2022年4月1日以後の贈与から18歳以上です。
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
同じ課税価格でも、特例税率のほうが控除額が大きく税負担は軽くなります。親子・祖父母孫の贈与で優遇されているわけです。
両方の計算が必要になるケース
1年間に、特例税率の対象になる贈与と一般税率の対象になる贈与を両方もらった場合、計算は少し複雑になります。
このときは、まず全部を合算して一般税率と特例税率それぞれで税額を出し、各々の財産が占める割合で按分して合計します。具体例は次の章で示します。
贈与税の計算例で具体的にシミュレーション
式だけ見ても腑に落ちないので、実際の数字を入れます。すべて速算表(国税庁 No.4408)に当てはめた計算です。

一般税率での計算例
例:夫から妻へ500万円を贈与(夫婦間なので一般税率)。
課税価格は 500万円-110万円=390万円。速算表で390万円は「400万円以下」なので税率20%・控除額25万円。
税額は 390万円×20%-25万円=53万円。
特例税率での計算例
例:父から25歳の子へ500万円を贈与(直系尊属から18歳以上、特例税率)。
課税価格は同じく390万円。ただし特例税率では「400万円以下」が税率15%・控除額10万円。
税額は 390万円×15%-10万円=48.5万円。同じ500万円でも、親子だと4.5万円安くなります。
一般と特例が混在する場合の計算例
例:その年に、父から400万円(特例)、配偶者から100万円(一般)、合計500万円をもらったとします。
まず全体500万円から110万円を引いた390万円を、一般・特例それぞれの税率で計算します。一般:390万×20%-25万=53万円。特例:390万×15%-10万=48.5万円。
次に財産割合で按分します。一般分(100/500):53万円×0.2=10.6万円。特例分(400/500):48.5万円×0.8=38.8万円。合計49.4万円が納める税額です。
正直、この混在パターンは手計算ミスが起きやすい。心配なら次章の節税策を確認したうえで、税理士に検算してもらうのが安全です。
贈与税がかからない・抑えられる5つのケース

贈与税は、使える枠を知っているかどうかで負担が大きく変わります。年110万円の基礎控除を含め、課税されない代表的な5つを整理します。

年間110万円以下の贈与
最も基本で、最も使われる枠。1年間の贈与合計が110万円以下なら贈与税はかからず、申告も不要です。
毎年コツコツ渡す「暦年贈与」は、長く続けるほど効きます。ただし後述の名義預金や生前贈与加算には要注意。
生活費・教育費の贈与
親が子の学費や生活費を必要な都度負担するお金は、もともと贈与税の対象になりません。仕送りや授業料の支払いがこれにあたります。
ただし「生活費としてもらった分を貯金や投資に回した」場合は課税対象になり得ます。あくまで必要な分を必要なときに、が原則です。
夫婦間(配偶者控除)の贈与
婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与した場合、基礎控除110万円とは別に最高2,000万円まで控除できる特例があります。いわゆる「おしどり贈与」です。
この特例を使うには、たとえ税額が0円でも贈与税の申告が必要です。申告しないと適用されない点に注意してください。
住宅取得等資金・教育資金などの非課税特例
直系尊属から住宅取得等資金をもらう場合や、教育資金・結婚子育て資金を一括で贈与する場合に、一定額まで非課税にできる特例があります。
いずれも適用期限や上限額、対象範囲が法改正でたびたび見直されています。教育資金の一括贈与の措置などは期限が設けられているため、利用前に国税庁の最新案内で必ず確認してください。
相続時精算課税制度の活用
相続時精算課税を選ぶと、同じ贈与者からの贈与を累計2,500万円まで特別控除でき、超えた分は一律20%課税になります。
加えて2024年以後の贈与からは、年110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除分は相続時に加算されないため、使い方次第で有利になります。詳細は次章で扱います。
2024年改正後の注意点と税務署に指摘されやすい落とし穴
2024年の改正で、贈与の「やり方」によって有利不利がはっきり分かれるようになりました。知らないと損する、あるいは後で課税される論点を押さえます。

相続時精算課税の年間110万円基礎控除の新設
これまで相続時精算課税は「贈与した分はすべて相続時に持ち戻し」でしたが、2024年以後は年110万円の基礎控除が設けられ、その範囲内なら申告も不要、相続時の加算もされません。
私の見立てでは、毎年110万円前後を長く渡したい人にとって、相続時精算課税の魅力が一段上がりました。一度選ぶと暦年課税に戻せない点だけは慎重に。
生前贈与加算(相続開始前7年以内)のルール
暦年課税で生前贈与をしても、相続開始前一定期間内の贈与は相続財産に加算されます。この期間が改正で「3年以内」から段階的に「7年以内」へ延長されました。
つまり「亡くなる直前の駆け込み贈与」は節税になりにくい。元気なうちに、早く始めるほど有利という構造です。
名義預金・名義保険で否認されやすいケース
子や孫の名義で口座を作り、親がお金を入れて通帳も印鑑も親が管理——これは典型的な「名義預金」で、実質は親の財産とみなされやすい。相続時に指摘される定番です。
贈与として認められるには、もらった本人が口座を管理し、自由に使える状態であることが大事です。形だけの名義移しは危ない。
贈与契約書を作って証拠を残す重要性
贈与は口約束でも成立しますが、税務署は「証拠」を見ます。いつ・誰が・誰に・いくら贈与したかを書いた贈与契約書を、贈与のたびに作っておくと安心です。
あわせて、振込で記録を残す、もらった側の口座で管理する。この3点セットで「実態のある贈与」を示せます。手書き一枚でも、無いよりはるかに強い。
贈与税の申告手続きと納付の流れ
計算ができたら、次は申告と納付です。期限は短く、過ぎるとペナルティが付きます。スケジュールから逆算して動きましょう。

必要書類と申告書の書き方
暦年課税なら基本は贈与税の申告書(第一表)。特例税率を使うなら、贈与者との関係を示す戸籍謄本など、特例ごとに添付書類が変わります。
相続時精算課税を初めて使う年は、選択届出書と一定の添付書類を申告書と一緒に提出する必要があります。届出を忘れると暦年課税のまま計算されてしまうので注意。
申告期限・提出方法と納付期限
贈与税の申告期限は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。納付期限も原則として同じ3月15日。
提出は、税務署の窓口・郵送のほか、e-Taxでも可能です。納付は金融機関や税務署のほか、口座振替やキャッシュレス納付も使えます。
申告漏れ・無申告のペナルティ(加算税・延滞税)
期限内に申告しなかった場合は無申告加算税、本来より少なく申告した場合は過少申告加算税、納付が遅れた分には延滞税がかかります。
特に注意したいのは、名義預金などが相続時にまとめて指摘されるケース。後からの追徴は本税に加算税・延滞税が乗るため、最初から正しく申告するのが結局いちばん安い。
暦年課税と相続時精算課税の選び方・専門家への相談

「結局どっちを選べばいいの?」が最大の悩みどころ。判断軸を整理し、迷ったときの相談先と費用感まで示します。

どちらが有利か判断する基準
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 基礎控除 | 年110万円 | 年110万円(2024年以後)+累計2,500万円の特別控除 |
| 選択の手続き | 不要(自動適用) | 届出が必要 |
| 途中変更 | いつでも | 選ぶと同じ贈与者で暦年課税に戻せない |
| 相続時の扱い | 相続開始前7年以内は加算 | 特別控除分は相続財産に加算(年110万円分は加算なし) |
ざっくり言えば、長期にわたり少額をコツコツ渡せる人は暦年課税、大きな財産をまとまって早めに移したい人や年110万円を堅実に渡したい人は相続時精算課税が候補になります。
相続税と比較した負担シミュレーション
贈与税は税率が高く見えますが、相続税の総額を下げる手段として捉えると評価が変わります。財産が多い家庭ほど、生前に少しずつ移して相続財産を圧縮する効果が出ます。
ただし相続税の税率や基礎控除は家族構成・財産額で大きく変わるため、ここで断定的な金額は出しません。実額の比較は、財産の全体像を入れたうえで試算する必要があります。
税理士に相談すべきケースと費用の目安
不動産が絡む贈与、相続時精算課税の選択、特例の併用、過去の名義預金が心配——このあたりは独学だと事故りやすい。私なら迷わず専門家に検算を頼みます。
費用は事務所や財産規模で幅があるため一律には言えません。初回相談を無料にしている事務所も多いので、まず見積もりを取って比較するのが現実的です。
贈与税の計算に関するよくある質問
最後に、検索でよく一緒に調べられる疑問へ短く答えます。

よくある質問
まずは去年もらった額を紙に書き出すところから。110万円を超えていたら、この記事の速算表で税額を出し、3月15日の期限を手帳に書いておきましょう。
