相続・終活の手続き・税金・費用を、制度の正確な解説と自治体ごとの実務(窓口・補助金・相談先)でまとめる、当事者のためのメディア。
ホーム › 遺言・家族信託・成年後見 › 家族信託とは?メリット・費用・始め方をわかりやすく解説
遺言・家族信託・成年後見

家族信託とは?メリット・費用・始め方をわかりやすく解説

相続・終活ナビ編集部 / 更新:2026-06-18
家族信託とは?メリット・費用・始め方をわかりやすく解説
親が認知症になったら預金が下ろせなくなる、実家を売れなくなる。そう聞いて不安になり、家族信託という言葉にたどり着いた方は多いはずです。結論から言うと、家族信託は元気なうちに財産の管理を家族へ託しておく契約で、認知症による資産凍結を防ぐ有力な手段です。

ただし万能ではありません。費用も税金もかかるし、頼む相手を間違えると家族が揉めます。

この記事では、家族信託の意味としくみ、メリットとデメリット、費用と税金、始め方の手順、そして失敗しないための注意点までを、出典つきで整理しました。私自身が制度を調べて「ここは見落とされがち」と感じた点も率直に書きます。

家族信託とは?意味としくみをわかりやすく解説

【3分でわかる】家族信託とは? わかりやすく解説!
【3分でわかる】家族信託とは? わかりやすく解説!

まず大前提から。家族信託は法律上の正式名称ではありません。信託法に基づく民事信託を、実務で分かりやすく呼んだ言い方です。

家族信託とは?意味としくみをわかりやすく解説

家族信託の定義と基本のしくみ

家族信託は、財産の所有者が信頼できる家族に財産の管理・運用・処分を託し、定めた目的に沿って利益を受ける人のために運用するしくみです。

対象になるのは不動産、預貯金、有価証券など、金銭的な価値のある財産です。

委託者・受託者・受益者の役割

家族信託の登場人物は3者です。財産を託す人が委託者、託されて管理する人が受託者、財産から利益を受ける人が受益者。

よくある形は、親が委託者と受益者を兼ね、子が受託者になるパターンです。親の財産を子が管理し、その利益は引き続き親が受け取る。だから贈与にはなりません。

家族信託の3当事者と役割
立場役割典型例
委託者財産を託す人。信託の目的を決める
受託者財産を預かり管理・処分する人
受益者財産から生じる利益を受け取る人親(委託者と兼ねる)

信託した財産は、管理する権利が受託者に、利益を受ける権利(受益権)が受益者に分かれて属します。

認知症による資産凍結を防ぐ役割

家族信託が注目される一番の理由がこれです。親の判断能力が落ちると、銀行口座は凍結され、不動産の売却もできなくなる。施設費用を親の預金から出すことすらできなくなります。

家族信託を結んでおけば、管理権はすでに受託者である子に移っています。親が認知症になっても、子が信託契約の目的に沿って預金を動かし、必要なら自宅を売ることができる。

三井住友信託銀行も、将来の判断能力低下に備える財産管理として民事信託を活用する人が増えていると説明しています。

民事信託・商事信託との違い

信託を業として行うには信託業法上の免許・登録が必要です。信託銀行などが行うのが商事信託で、報酬を得て不特定多数から財産を預かります。

家族信託は、家族・親族が受託者となる私人間の信託です。受託者は家族なので、原則として継続的な管理報酬は発生しません。

家族信託のメリットとデメリット

正直に言うと、家族信託はメリットとデメリットがきれいに釣り合う制度ではありません。柔軟さという強みが大きい一方で、コストと手間という弱みもはっきりしています。

家族信託のメリットとデメリット

家族信託の代表的なメリット

最大の利点は柔軟性です。遺言や成年後見制度と比べて、財産の管理方法を自由に設計できると説明されています。

具体的には次の3点が大きい。認知症後も資産が凍結されない。承継先を何代も先まで指定できる。家族が受託者なので管理報酬がかからない。

知っておきたいデメリットと限界

一方で、組成時にまとまった費用がかかります。後述しますが、現金のみでも20万〜40万円程度という事例が示されています。

さらに、信託できるのは特定の財産だけ。身上監護(介護や入院の手続き)はカバーできません。ここは成年後見と違って家族信託の弱点です。

私の印象では、財産管理に特化した制度だと割り切るのが正解。介護の契約までやってほしいなら、後述の任意後見と組み合わせる必要があります。

成年後見制度・遺言との違い

よく比較される3制度を整理します。家族信託は遺言や成年後見より柔軟に運用できる点が特徴です。

家族信託・成年後見・遺言の比較
項目家族信託成年後見遺言
開始時期契約時(生前)判断能力低下後死亡後に効力
財産の柔軟な運用できる制限が大きい原則できない
身上監護できないできるできない
数代先への承継指定できるできない原則できない

成年後見は本人保護が目的なので、財産を積極的に運用したり自宅を売ったりするのに家庭裁判所の関与が必要です。家族信託は元気なうちに設計しておく分、その後の自由度が高い。

家族信託の始め方と手続きの流れ

何から手をつければいいのか。民事信託は、委託者と受託者の間で信託契約を結ぶことで成立します。契約の中身を固める準備が一番のヤマです。

家族信託の始め方と手続きの流れ

事前に決めておくべきこと

契約書を作る前に、家族で決めておくべきことがあります。誰を受託者にするか。どの財産を信託するか。受益者は誰か。そして信託をいつまで続けるか。

信託期間と、信託が終わったときに財産を誰に渡すか(残余財産の帰属先)を定めることが特に重要です。

信託の目的の決め方

信託契約の核は「信託の目的」です。受託者は、この目的の範囲でしか財産を動かせません。

例えば「委託者の生活・療養・介護費用に充てるため」と書けば、受託者は施設費用の支払いに財産を使えます。目的が曖昧だと、後で「この出費はアリか」と家族が揉める原因になります。具体的に書くほど安全です。

信託契約書の作成と公正証書化

契約書は公正証書にするのがほぼ必須です。家族信託契約は、公証人が作成する公正証書で契約することが不可欠とする説明があります。

理由は2つ。後から「無理に書かされた」と争われにくくなること。そして次に説明する信託口口座の開設で、銀行が公正証書を求めることが多いからです。

信託口口座の開設と金融機関の実情

信託した現金は、受託者個人の口座ではなく「信託口口座」という専用口座で管理します。受託者の財産と完全に分けるためです。

ここが実務の落とし穴。信託口口座は、どの銀行でも作れるわけではありません。対応する金融機関が限られ、公正証書を事前に確認したいという銀行も多い。

私が調べて驚いたのは、口座が開設できないと信託の運用そのものが回らなくなる点です。契約を作る前に、取引予定の金融機関が信託口口座に対応しているかを確認しておくべきです。

家族信託にかかる費用と税金

【2024年相続】知らないとやばい?家族信託のデメリット5選!
【2024年相続】知らないとやばい?家族信託のデメリット5選!

気になるお金の話です。初期費用の目安は、現金のみで20万〜40万円程度、不動産を含むと信託財産額の1.5〜2%という事例が示されています。

家族信託にかかる費用と税金

組成時にかかる初期費用の目安

専門家報酬は事務所によって体系が違います。ある事務所の案内では、財産額に応じた料率方式が示されています。

専門家報酬の事務所例(信託財産額に応じた料率)
公的な標準額ではなく一事務所の案内です
信託財産額報酬の目安
1億円以下1%(3,000万円以下は最低30万円)
1億円超3億円以下0.5%+50万円
3億円超5億円以下0.3%+110万円
5億円超10億円以下0.2%+160万円
10億円超0.1%+260万円

同じ事務所では相談料を30分3,000円、60分5,000円と案内しています。不動産を含む場合は、信託登記に関する費用が別途かかります。

贈与税・相続税・登録免許税など税金の扱い

税金は誤解の多いところ。親が委託者兼受益者なら、信託しても利益は親のまま動かないので、その時点で贈与税はかかりません。ここは安心していい。

ただし不動産を信託すると、名義変更の登記が必要になり、登録免許税がかかります。実際の税率や金額は財産や時期で変わるため、組成前に税理士へ確認してください。

信託終了時に財産が受益者から別の人へ移れば、その移転には相続税や贈与税の対象になり得ます。「信託したら税金がかからない」は誤りです。

信託計算書など税務申告の手続き

見落とされがちなのが申告の手間です。信託財産から一定以上の収益(賃貸不動産の家賃など)が出ると、受託者は信託計算書と合計表を税務署へ提出する義務があります。

収益不動産を信託する家庭は、毎年この事務が発生すると見込んでおくべきです。自宅と現金だけなら負担は軽い。

信託監督人報酬などのランニングコスト

受託者が家族なら管理報酬は基本かかりません。ただし、受託者を監督する信託監督人を専門家に頼めば、その報酬は継続的に発生します。

専門家に組成後のサポートを継続で依頼する場合も同様です。初期費用だけでなく、続くコストを最初に見積もっておくと後悔しません。

家族信託で失敗しないための注意点とトラブル事例

ここが本記事で一番伝えたいところです。家族信託は、契約の作り方より「誰とどう合意するか」で成否が決まると私は考えています。

家族信託で失敗しないための注意点とトラブル事例

受託者が先に死亡・認知症になった場合の備え

親より子が先に倒れることはあります。受託者が死亡・認知症・破産すると、信託が止まる。これが盲点です。

対策は、契約書に予備的受託者(第二受託者)を定めておくこと。最初の受託者に何かあったとき、次の人が引き継げるようにしておきます。長期の信託ほど必須です。

家族間の合意形成と揉めないための工夫

受託者になる子だけで話を進めると、他のきょうだいが「財産を勝手に握られた」と反発しがちです。

私が勧めるのは、組成前に相続人になる全員へ説明し、目的と帰属先を共有しておくこと。受託者には帳簿の作成・報告義務があるので、その内容を定期的に家族へ開示する取り決めも入れておくと、不信感が生まれにくい。

認知症発症後は契約できないタイミングの重要性

一番厳しい現実です。信託契約は委託者の判断能力があるうちにしか結べません。認知症が進んでからでは手遅れになります。

「まだ元気だから来年でいい」と先送りした結果、間に合わなかった例は珍しくありません。検討を始めるなら今です。判断能力が落ちてからでは、残る選択肢は成年後見だけになります。

家族信託が向かない・できないケース

信託できない財産があります。代表は農地、年金受給権、そして債務(借金)。財産の管理権を移すのが信託なので、本人にしか帰属しない権利は託せません。

また、身上監護が中心の課題なら家族信託は向きません。財産が少なく管理の必要が薄い家庭も、費用に見合わないことがあります。無理に組む制度ではありません。

家族構成・財産別に見る家族信託の活用ケーススタディ

制度の説明だけでは自分ごとになりにくいので、具体的な家族像で考えます。家族信託は相続・承継の設計に使われる場面が多いと説明されています。

家族構成・財産別に見る家族信託の活用ケーススタディ

親が認知症になる前に備えたいケース

80代の親が自宅と預金を持ち、同居の長男が管理を担う。委託者兼受益者を親、受託者を長男にします。

これで親が認知症になっても、長男が施設費用を預金から払い、必要なら自宅を売って入所費に充てられる。最もシンプルで、相談の多い形です。

受益者連続型信託で数次相続に備えるケース

少し高度な使い方です。先妻との子と後妻がいる、といった事情で「まず妻へ、妻の死後は自分の子へ」と承継先を順に指定したい場合。これを受益者連続型信託と呼びます。

遺言では二代先までは指定できませんが、信託なら可能です。ただし無制限ではなく、信託開始から30年を超えた後に新たに受益権を取得した受益者が死亡すると信託は終了する、という期間の制限があります。設計には専門家が必須です。

他の対策との費用対効果の比較

家族信託だけが正解ではありません。目的に応じて他の対策と比べるべきです。

認知症・相続対策の手段比較
手段主な目的認知症後の財産管理身上監護
家族信託財産管理と柔軟な承継対応できる対応できない
任意後見判断能力低下後の支援対応できる対応できる
生前贈与早期の財産移転贈与済みなら影響なし対応できない
遺言死後の財産分け対応できない対応できない

財産の運用と承継なら家族信託、介護の手続きまで任せたいなら任意後見。両方の課題があるなら、次のセクションのとおり組み合わせるのが現実的です。

信頼できる専門家の選び方と相談先

家族信託の手続きは自分でできる?
家族信託の手続きは自分でできる?

家族信託は、頼む相手で結果が大きく変わります。家族信託は遺言や任意後見との組み合わせが有効で、複数の専門領域がからむからです。

信頼できる専門家の選び方と相談先

司法書士・弁護士・税理士の役割分担

役割が分かれます。契約設計の全体を司法書士や弁護士が担い、不動産の信託登記は司法書士が行う。税務の判断や申告は税理士の領域です。

家族信託に関わる専門家の役割
専門家主な担当
司法書士契約設計・不動産の信託登記
弁護士契約設計・親族間の紛争対応
税理士税務判断・信託計算書など申告

一人で全部は完結しません。複数の専門家が連携できる体制かどうかが、選ぶときの基準になります。

良い専門家を見極めるポイント

私が見るのは、家族信託の組成実績があるか、税理士と連携しているか、そして組成後のサポートまで説明してくれるか。

メリットだけ並べる人より、できないこと・向かないケースをきちんと言う人を信頼します。デメリットを正直に話せるのは、数をこなしている証拠です。

悪質業者を避けるための注意点

気をつけたいのは、相場とかけ離れた高額報酬や、必要のない信託まで勧めてくる業者です。前述のとおり費用の相場は事務所ごとに違うため、必ず複数から見積もりを取ってください。

「今すぐ契約しないと手遅れ」と急かす一方で、目的や帰属先の確認が雑な相手は避けるべきです。なお、家族信託普及協会のような団体は一般の方からの直接相談を受け付けていないので、相談は実務を担う専門家へ。

家族信託に関するよくある質問

最後に、検討段階でよく一緒に調べられる疑問をまとめます。

家族信託に関するよくある質問

よくある質問

家族信託とは何ですか?
財産の所有者(委託者)が、信頼できる家族(受託者)に財産の管理・運用・処分を託し、定めた目的に沿って利益を受ける人(受益者)のために運用するしくみです。信託法に基づく民事信託の実務上の呼び方で、認知症による資産凍結への備えとして活用されます。
家族信託の費用はいくらですか?
事例では、現金のみの場合で20万〜40万円程度、不動産を含む場合で信託財産額の1.5〜2%とされています。別の事務所では1億円以下で1%(3,000万円以下は最低30万円)という料率の案内もあります。いずれも公的な標準額ではなく事務所ごとの案内で、不動産があると信託登記費用が別途かかります。
家族信託の始め方は?
まず受託者・信託する財産・受益者・信託の目的・期間・残余財産の帰属先を家族で決めます。次に専門家とともに信託契約書を作り、公正証書にします。その後、信託する現金用の信託口口座を金融機関で開設し、不動産があれば信託登記を行います。委託者の判断能力があるうちに進めることが前提です。
信託が終わったときの財産はどうなりますか?
信託契約で定めた残余財産の帰属先(受け取る人)に財産が渡ります。誰に渡すかを契約時に決めておくことが重要です。なお信託終了時に財産が別の人へ移れば、相続税や贈与税の対象になり得るため、設計段階で税理士に確認しておくと安心です。

家族信託は、親が元気な今しか始められません。先送りで間に合わなかった例を見るたびに、検討だけでも早く動く価値があると感じます。まずは信託したい財産を書き出し、複数の専門家に見積もりを取るところから始めてください。

この記事について質問できますAIが記事をもとに答えます
こんにちは。この記事について、下の候補から選ぶか、自由に質問できます。
相続・終活ナビ編集部

相続・終活ナビ編集部

相続・終活の制度(相続登記の義務化・相続税・住宅宿泊…ではなく相続の各法令)と、自治体ごとの実務(窓口・空き家補助金・相談先)を、公式情報という一次情報にあたって整理。費用や手続きは出典つきで、当事者目線でまとめています。健康・法律に関わる内容は専門家の確認を前提とします。

メルマガ登録

相続・終活ナビ編集部
相続・終活ナビ編集部
相続・終活の制度(相続登記の義務化・相続税・住宅宿泊…ではなく相続の各法令)と、自治体ごとの実務(窓口・空き家補助金・相談先)を、公式情報という一次情報にあたって整理。費用や手続き

記事には書ききれない現場のリアルや最新の動きを、わたしから直接メルマガでお届けします。よかったら登録してください。

登録は無料・いつでも解除できます。