相続税の控除を徹底解説|基礎控除と6つの税額控除の使い方

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」。遺産がこの額以下なら、相続税はかかりません。
この記事で分かること:基礎控除と税額控除の違い、5ステップの計算手順、家族構成別の試算、申告に必要な書類と期限。私が公式情報を当たって、当事者目線で整理しました。
相続税の控除とは?まず知っておきたい全体像

相続税の控除は、ひとことで言えば「払う税金を減らせる仕組み」です。ただし種類が二段構えになっていて、ここを混同すると計算が狂います。

相続税の控除は「払う税金を減らせる仕組み」のこと
控除には大きく2タイプあります。ひとつは遺産の総額そのものから差し引く「基礎控除」。もうひとつは、計算した税額から直接引く「税額控除」です。
基礎控除は最初の関門。ここを超えなければ、そもそも相続税は発生しません。
控除には基礎控除と6つの税額控除がある
税額控除の主な顔ぶれは、配偶者の税額軽減、未成年者控除、障害者控除、贈与税額控除、相次相続控除、外国税額控除です。これに評価額を下げる「小規模宅地等の特例」が加わります。
| 区分 | 名称 | 効果のイメージ |
|---|---|---|
| 遺産から控除 | 基礎控除 | 3,000万円+600万円×法定相続人の数を差し引く |
| 評価額を下げる | 小規模宅地等の特例 | 居住用宅地330㎡まで80%減額 |
| 税額から控除 | 配偶者の税額軽減 | 1億6,000万円または法定相続分まで非課税 |
| 税額から控除 | 未成年者控除 | 18歳までの年数×10万円 |
| 税額から控除 | 障害者控除 | 85歳までの年数×10万円(特別障害者は×20万円) |
| 税額から控除 | 相次相続控除 | 10年以内の連続相続で前回税額を逓減控除 |
| 税額から控除 | 贈与税額控除 | 加算された贈与の既払贈与税を控除 |
控除を使うと税負担はどう変わるか
例えば法定相続人が3人なら、基礎控除だけで4,800万円。遺産がこの範囲なら税金はゼロです。
さらに配偶者が相続すれば、1億6,000万円まで配偶者には課税されません。控除を組み合わせると、思った以上に税負担は軽くなります。
相続税の基礎控除のしくみと計算方法
まず押さえるべきは基礎控除です。これがいくらかで、申告が必要かどうかが決まります。

基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」
国税庁が示す計算式は明快です。法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円と、1人増えるごとに600万円ずつ増えます。
2015年の改正で基礎控除額が引下げられた
実は2015年に基礎控除は大きく縮小されました。それまでは「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」だったものが、今の「3,000万円+600万円×法定相続人の数」に。
つまり相続人3人の世帯では、控除の枠が8,000万円から4,800万円へ。3,200万円も減ったわけです。これにより、都市部に持ち家がある一般家庭でも相続税の対象になるケースが増えました。
法定相続人の数え方と相続放棄があった場合の具体例
基礎控除の「法定相続人の数」は、民法で相続権がある人の数です。配偶者は常に相続人。それに加えて第1順位の子、いなければ親、それもいなければ兄弟姉妹という順番です。
ここが要注意。相続放棄をした人がいても、基礎控除の計算では「放棄がなかったもの」として数えます。
例えば配偶者と子2人のうち、子1人が放棄したとします。実際に相続するのは2人でも、基礎控除上の法定相続人は3人のまま。基礎控除は4,800万円で計算します。これは知らないと損をしやすいポイントです。
基礎控除以外の6つの控除を使いこなす
基礎控除を超えても、まだ諦めるのは早い。税額から直接引ける控除が複数あります。なかでも配偶者の軽減はインパクトが大きい。

配偶者の税額軽減と使う際の落とし穴
配偶者が取得した財産は、1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額まで相続税がかかりません。多くの一次相続では、これで配偶者の税額がゼロになります。
ただし落とし穴があります。配偶者にすべて寄せて目先の税金をゼロにすると、その配偶者が亡くなる「二次相続」で、子が一気に重い税金を負うことがある。
正直、ここは安易に使うと損をします。一次・二次を通した総額で考えるべきところです。
未成年控除・障害者控除
相続人が18歳未満なら、18歳になるまでの年数×10万円を税額から引けます。15歳なら3年分で30万円という計算です。
障害者控除はもっと大きい。85歳になるまでの年数×10万円、特別障害者なら×20万円。仮に40歳の特別障害者なら、45年×20万円で900万円が控除対象になります。
暦年課税分の贈与税額控除・相次相続控除
生前贈与で相続税の加算対象になった分は、すでに払った贈与税を相続税から差し引けます。二重課税を防ぐための制度です。
相次相続控除は、10年以内に相続が連続したときの救済策。前回の相続で課された税額を、経過1年につき10%ずつ減らした金額を、今回の税額から控除します。
小規模宅地等の評価減の特例
自宅の土地は、要件を満たせば評価額を大きく下げられます。特定居住用宅地等は330㎡まで80%減額。特定事業用宅地等は400㎡まで80%減額です。
5,000万円の自宅土地が1,000万円扱いになる、というレベルの効果。これは控除というより評価減ですが、税負担を左右する大きな制度です。
相続税額を求める5ステップの計算手順

相続税は、財産を全部足して人数で割って…という単純計算ではありません。法定相続分でいったん計算してから、実際の取得割合で配分する独特の流れです。順を追います。

課税価格と課税遺産総額を出す
ステップ1は、各人が取得した財産から、債務や葬式費用を引いて課税価格を出すこと。ステップ2で、その合計から基礎控除を差し引いた額が「課税遺産総額」です。
ここでマイナスになれば、相続税はかかりません。申告も原則不要です。
法定相続分で総相続税額を計算する
ステップ3が独特です。課税遺産総額を、実際の分け方ではなく「法定相続分どおりに分けた」と仮定して、各人の税額を計算し、それを合算します。これが相続税の総額です。
なぜこんな手順かというと、分け方によって税額が変わらないようにするため。誰がどう取得しても、まず総額は一定になります。
実際の相続分で按分し各種控除・加算を行う
ステップ4で、その総額を実際に取得した割合で按分。ステップ5で、配偶者の税額軽減や未成年者控除などを各人ごとに適用します。
配偶者や一親等の血族以外が相続する場合は、逆に税額が2割加算される点も忘れずに。
債務控除・葬式費用や生命保険金の非課税枠
課税価格を出す段階で見落としがちなのが、債務控除と葬式費用です。被相続人の借入金や未払いの医療費、通夜・葬儀の費用は財産から差し引けます。
生命保険金と死亡退職金には、それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。相続人3人なら1,500万円までが非課税。これは現金を残す手段としても有効です。
家族構成・遺産総額別の計算シミュレーション事例
言葉だけでは実感が湧きません。私が同じ遺産総額で、家族構成を変えて試算してみました。控除の効き方が一目で分かります。

配偶者と子がいる場合の試算
| 遺産総額 | 相続人2人(配偶者+子1)の基礎控除 | 相続人3人(配偶者+子2)の基礎控除 | 課税対象の有無(3人の場合) |
|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 課税対象なし |
| 6,000万円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 1,200万円が課税対象 |
| 1億円 | 4,200万円 | 4,800万円 | 5,200万円が課税対象 |
遺産6,000万円・相続人3人なら、基礎控除4,800万円を引いた1,200万円が課税対象。さらに配偶者が取得する分には配偶者の税額軽減が効くため、最終的な納税額はぐっと下がります。
二次相続まで見据えた控除活用の比較
ここが一番の落とし穴です。一次相続で配偶者の軽減をフル活用すると、目先はラク。でも配偶者自身の財産に上乗せされ、二次相続では使える控除が減ります。
二次相続には配偶者の税額軽減がありません。しかも相続人が1人減るぶん、基礎控除も600万円縮みます。
私の考えでは、配偶者の取得割合は二次相続の試算とセットで決めるのが鉄則。目先のゼロにつられると、トータルで損をしかねません。
控除が使えず税負担が増えるケース
控除には要件があります。配偶者の税額軽減も小規模宅地等の特例も、原則として申告期限までに申告書を出すことが条件です。
遺産分割が期限までにまとまらず未分割のままだと、これらの特例はいったん使えません。結果として高い税額をいったん納めることになります。
「控除があるから大丈夫」と油断していると、要件を外して使えない——これが現場で一番多いつまずきです。
控除を受けるための申告手続きと必要書類
控除の多くは「黙っていても適用される」ものではありません。申告して初めて使えます。期限と書類を押さえておきましょう。

申告期限は10ヶ月、過ぎた場合のペナルティ
相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。この10か月で、財産の把握、評価、遺産分割、申告書作成まで終える必要があります。
期限を過ぎると無申告加算税や延滞税がかかります。配偶者の税額軽減のような期限内申告が要件の控除は、原則使えなくなる点が痛い。10か月は、思っているより短いです。
控除ごとに必要な書類と適用要件
| 控除・特例 | 主な要件 | 必要になる主な書類の例 |
|---|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 期限内に申告し、財産が分割済みであること | 戸籍謄本、遺産分割協議書または遺言書の写し |
| 小規模宅地等の特例 | 居住・事業の継続など要件を満たすこと | 住民票、遺産分割協議書、宅地の評価資料 |
| 未成年者・障害者控除 | 相続人が該当者であること | 戸籍謄本、障害者手帳の写しなど |
共通して必要なのが、法定相続人を確定するための戸籍一式と、誰が何を取得したかを示す遺産分割協議書です。これがないと特例の判定ができません。
税理士に相談するタイミングと費用感
相談のタイミングは、早ければ早いほどいい。特に未分割を避けたいなら、相続発生後すぐが理想です。
正直に言うと、配偶者の軽減と二次相続が絡む案件、小規模宅地等の特例を使う案件は、自力申告のリスクが高い。要件の判定を誤ると追徴になります。
費用感は事務所ごとに差があり、確定した相場として示せる出典が手元にありません。複数の事務所に見積もりを取り、遺産総額に対する報酬率を比べるのが現実的です。
相続税の控除でよくある質問

最後に、調べる人が必ずぶつかる3つの疑問に答えます。併用、費用、始め方。ここを押さえれば次の一歩が見えます。

よくある質問
私からの一歩の提案は、今日のうちに「法定相続人が何人か」と「遺産がざっくりいくらか」をメモすること。この2つで基礎控除を超えるかが分かり、申告が要るかどうかの見当がつきます。
